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Fig-9 Compare field survey of tsunami flooded area with simulated area in Suzaki-port.

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Fig-10 Distribution of maximum tsunami runup height in Osaka-port

4. おわりに
本報告は、日本沿岸を対象とする海域別津波計算システム構築の一環として、新たに開発した西日本広域津波計算システムを概説した。主な成果を次にまとめる。
?西日本広域津波計算システムは、西日本の海岸を対象とする大規模なものであり、南海道・大阪湾・山陰の3つの海域別システムにより構成される。システムでは、海岸全域を200m格子、港湾区域を陸域を含めて50m格子で地形近似し、広範囲の津波計算であるにもかかわらず、追跡する津波波形の計算精度の向上を図る。
?山陰システムは、日本海全域と山陰沿岸域の2段階の計算を行う、山陰沿岸の計算は、沖側境界から、日本海全域計算で求められる津波入射波形を与える。
?本システムの特徴は、他領域との接続処理において、非線形項を考慮する流量計算を行う点である。大阪湾のように、港湾が隣接し、非線形性が卓越する海岸及び陸上に接続境界を設定する場合、有効な方法である。
?南海道システム及び大阪湾システムは、昭和南海地震津波の追算を行い、山陰システムは、日本海中部地震津波の追算を行った。幾何平均、幾何分散による計算精度の評価によれば、いづれの計算も、数%程度の誤差となり、許容範囲内にある良好な結果であった。
今後、構築された広域システムを利用すれば、近い将来、来襲するであろう想定津波を対象とする予測計算を行うことにより、西日本全域の防災構造物の機能検討をはじめ、種々の価値ある情報の入手が、短時間で容易に可能となる。また、本システムは、従来から研究課題とされている津波波形の再現を目標とする地形近似を行っており、計算手法の研究進展上も有効な道具となる。
謝辞:本論文をまとめるに当たり、東海大学工学部後藤教授より数々の後助言を頂いた。また、建設省近畿地建、四国地建をはじめとする沿岸の関係自治体の各位から貴重な地形情報を提供して頂いた。ここに謝意を表します。
参考文献
1)柴木秀之・戸引勲・額田恭史・後藤智明:南関東津波計算システムの開発;第19回海洋開発シンポジウム、1994.
2)今村文彦・後藤智明:差分法による津波計算の打ち切り誤差;土木学会論文集、第375号、1986.
3)長谷川賢一・鈴木孝夫・稲垣和男・首藤伸夫:津波の数値計算における格子間隔と時間積分間隔に関する研究;土木学会論文集、第381号、1987,
4)岩崎敏夫・真野明:オイラー座標による二次元津波遡上の数値計算;第26回海岸工学講演会論文集、土木学会、1979.
5)相田勇:南海道沖の津波の数値実験;地震研究所彙報、第56号、1981.
6)相田勇:1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル;地震研究所彙報、第59号、1984.

 

 

 

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